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2011年12月19日月曜日

札幌市の学校給食食材の放射性物質検査について

北海道内で、いち早く学校給食食材の放射線独自検査を決定していた札幌市の検査方針が12月5日に発表され、12月より定期的な検査が開始されました。


   札幌市 「学校給食食材の放射性物質検査について」 2011年12月15日


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1 検査項目について
  (1)放射性セシウム(セシウム134及びセシウム137)
  (2)放射性ヨウ素(ヨウ素131)
2 検査時期について
  平成23年12月から検査を開始し、その後定期的(月2回程度)に実施します。
3 検査方法について
  使用前日、納品業者に保管されているものの中から2品目程度抽出し、専門の検査機関でゲルマニウム半導体検出器を用いて測定します。
4 主な検査対象食材について
  (1)放射性物質の検査対象とされている1都16県で生産された青果物
   (福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、神奈川県、宮城県、岩手県、青森県、秋田県、山形県、新潟県、長野県、埼玉県、東京都、山梨県、静岡県)
  (2)上記生産地の食肉(鶏肉・牛肉)
  (3)その他(魚介類)
    ※23年度(これからの冬期間)は、青果物を中心に検査を実施します。
5 検査後の対応について
  検査の結果、検出限界値である4ベクレル/kg以上の値が検出された場合は、念のため学校給食での使用を控えます。
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学校給食食材の放射線の独自検査をいち早く決定し、放射性セシウムの測定基準を4ベクレル/kg以下とする札幌市の放射線検査方針の決定は他の自治体の先駆けとなるもので、今後の他の自治体での検査体制の確立へのモデルになるものと思われます。

このセシウム4ベクレル/kg基準は、先進的なドイツ放射線防護協会の「日本における放射線リスク最小化のための提言 」(2011年3月20日) に勧告に準ずるもので、子どもたちを放射線リスクから守る上での指針となるものです。

2011年12月8日木曜日

帯広市教育委員会、給食食材放射性物質を独自測定へ

帯広市教育委員会は、12月7日午後の市議会で学校給食に使用する食材について、調理前の放射性物質を測定できるように測定器の導入することを明らかにしました。

この給食食材の独自放射線測定機導入を決定したのは、道内では札幌市、後志管内倶知安町に続いて3番目になります。先進的で独自の学校給食食材の安全性ポリシーを表明した帯広市のご尽力に敬意を表したいと思います。

そこで、学校給食食材の独自測定の意義について、ポイントをまとめたいと思います。


〔1〕 食品暫定基準500ベクレル/kgとは

帯広市の学校給食食材の放射能測定は来年度からとなりますが、この給食食材の独自放射能測定の決断は従来の「国の暫定基準を超える食材は流通していないので独自検査の必要はない」という見解から、独自検査による測定という積極的姿勢に方針転換したものです。 この決定の大きな意義は、現在の食品の放射能暫定基準500ベクレル/kg(野菜・肉・卵などのセシウムの場合)がどんな意味を持つ基準なのかという問題に関わっています。 (牛乳中のセシウム暫定基準は200ベクレル/kgです)

この暫定基準500ベクレル/kgというのは、WHOが「全面核戦争に陥った場合に餓死を避けるためにやむを得ず口にする食物の汚染上限」として定めた値に基づくもので、放射性セシウム500ベクレル/kgの食品を3年間食べ続ければ致死量に達します。

つまり、核戦争発生時の緊急避難的な基準です。暫定基準値以下であれば安全という基準ではありません。500ベクレル暫定基準がそうした値であることをまず理解しておく必要があります。 本来、「暫定基準」は緊急避難的措置として講じられる基準で、「暫定」という期間は非常時のやむを得ない「3ヶ月間」程度を限度として設定されるべきものなのですが、事故発生から9ヶ月経過してもなお「暫定基準」で食品が流通することはあってはならない措置と言えます。    

参考:「放射性物質関連の基準値まとめ」●食品の暫定基準値 by 「はるかな高みから」


〔2〕 学校給食食材の放射線測定の意義

学校給食食材の放射線量を測定する意味は、仮に大人が摂取して安全な放射線量であっても、細胞分裂がさかんな成長期の子どもたちにとっては必ずしも安全とは言えないからです。現在の暫定基準には、乳幼児を除いて、年齢別の摂取基準はありません。改訂が予定されている新基準では考慮されるかもしれません。市中に出回っている暫定基準をクリアした食材であっても、子どもたちにとってのリスクは大人と違うため、より正確な放射線量を把握しておく必要があるわけです。


〔3〕 放射線リスク - ICRP勧告とECRR勧告

日本の放射線防護基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)の基準に基づいて設定されています。この基準は、広島・長崎の原爆による被爆調査をもとにして作られた放射線の被曝影響評価の基準とされています。

しかしながら、このICRP勧告には内部被爆の影響が過小評価されているという指摘があります。どうして内部被爆が過小評価された国際基準が生まれたのかについては、10月に十勝でも講演された琉球大学名誉教授矢ヶ﨑克馬先生の著書「隠された被爆」に詳しく紹介されています。

参考:内部被曝──原爆・劣化ウラン兵器と人類への宿題(要旨)」

一方、チェルノブイリ原発事故の汚染地域における被爆影響についての検証を行っている欧州放射線リスク委員会(ECRR)は、ICRP勧告が内部被爆の影響を過小評価していること指摘し、独自の放射線防護基準勧告を行っています。最新版である「ECRR2010年勧告」によれば、内部被爆のICRPリスク評価モデルが100倍から1000倍の規模で誤っていることを指摘しています。


〔4〕 日本における放射線リスク最小化のための提言

 日本の放射線の食品暫定基準が決定されたのは3月17日ですが、3月20にドイツ放射線防護協会は日本のおける食品の放射線防護基準の勧告を行っています。日本の暫定基準設定をうけての勧告であり、ECRRの内部被爆評価に準じた提言でもあります。

その日本語訳が公開されていますので、紹介します。


  参考:「日本における放射線リスク最小化のための提言」 ドイツ放射線防護協会

それによると、 「乳児、子ども、青少年に対しては、1kgあたり4ベクレル以上のセシウム137 を含む飲食物を与えないよう推奨されるべきである。成人は、1kgあたり8ベクレル以上のセシウム137を含む飲食物を摂取しないことが推奨される」とあります。

日本の乳製品セシウム暫定基準値200ベクレルである明治の粉ミルクが、30ベクレル/kg検出で回収されたことを意外に思う方もおられるかもしれませんが、ドイツ放射線防護協会の勧告から見れば、当然の措置と言えます。



〔5〕 給食としての牛乳

十勝ネット市民会の主催でご講演いただいた木下黄太氏の12月7日の『放射能防御プロジェクト 木下黄太のブログ』  「セシウム粉ミルクで思うこと。「給食から牛乳排除を」 によれば、釧路国道沿いの土壌20Bq/kgの汚染状況から、十勝における牧草汚染の懸念について触れておられます。十勝の牧草汚染実態を正確に把握し、地産地消に基づく学校給食の安全性を確保していくためにも、十勝の牛乳の正確な放射線測定値の把握と公開が必要ではないでしょうか。



2011年12月2日金曜日

泊原発の廃炉をめざす会共同代表 市川弁護士の講演をYouTubeに上げました

「市民フォーラム十勝」主催による泊原発の廃炉をめざす会共同代表の市川守弘氏の講演を、YouTubeにアップロードしました。

脱原発連続講座第3回
講師 泊原発の廃炉をめざす会共同代表 市川守弘
主催 市民フォーラム十勝
2011年11月27日 とかちプラザ

前半は、訴訟の意義。後半は、泊のまわりの地震の状況が説明されています。
次のリンクをクリックすると、連続再生されます。約75分です。

「泊原発の危険性と廃炉をめざす訴訟の意義」YouTube